ぜんぜん足りない。



『俺、このマンション出るから』


中学3年の冬。
その言葉で、どん底に落とされる。



そんなにわたしのことが嫌いになった?

そんなにわたしの存在が鬱陶しかった?



うん、と言われるのが怖くて声にはならなかった。
涙を堪えて『わかった』と返事をするので精一杯で……。



それを期に、お母さんと律希パパは離婚した。


仲が悪くなったってわけじゃない。


ふたりは本当に親友という関係でしかなくて、再婚したのは、家族になったほうが子育ての経済的な面、その他もろもろ…の面で都合がいいからという理由だったらしい。


あっさりしてて軽々しい、と思われるかもしれないけど、ふたりはふたりなりに、わたしたちのことをとても大事に想ってくれていたんだ。


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