ぜんぜん足りない。
ぼやあ〜っとしてたから、一旦まばたきした。
ちょっとクリアになった視界の真ん中に、やっぱりこおり君がいる。
ええっと……。
「わたし、まだ夢の中?」
「はあ?」
「だって、こおり君が……いる」
「どうでもいいから、早く水」
飲め、って。
強引に押し付けられたコップを受け取った。
状況が理解できないまま、ゴクゴク……。
あ、おいしい。
って、そうじゃなくて。
「なんで、こおり君がいるのっ?」
「ここ、おれの部屋ね。わかる?」
「う……え?……あ、ほんとだ、」
シンプルイズベストの、殺風景な部屋。
「おまえ教室で倒れたの。覚えてる?」
「……、っあ」
そうだった、かも。
記憶、ないんだけど。
終礼中に意識が遠くなったんだった。