ぜんぜん足りない。

……てことは。

夢じゃない。


どこから、どこまでが?



「こおり君が運んでくれたの?」

「そー」

「じ、じゃあ、……っ」


さっきのは?

わたしが、ずっとそばにいてって言ったのは現実なの⁉


かああっと顔に熱が集中して、湯気が出ていきそうな勢い。



「な、なんでもないです……」


今すぐ帰りたい。顔なんて見れない。


だって、普通に考えてみて?

フッた相手が自分に未練たらたらで、熱に侵されていたとはいえ、手をぎゅうっと握って、「そばにいて」って言うんだよ。


ふつうに、気持ち悪がられる気しかしない……。



「おせ…お世話になりました、迷惑かけてごめんなさい……っ、では、わたしはこれで帰るので……」


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