ぜんぜん足りない。


「じゃあ、みやこはこっちだから」


帰り道が反対方向のミヤちゃんを見送って、みっちーとふたりで歩く。


いつもは何かしら話題を繋げてくるみっちーは、なぜかずっとだんまりだった。


もしかして知らないうちに怒らせたのかな……と思うとわたしからも話しかけられずに、ひとりで勝手に気まずい時間をすごしていたら。



「桃音ちゃんの好きってどれくらいだった?」


とつぜん、そんなことを聞かれて固まった。

ぱちくり。まばたきをする。



「どれくらいって……?」

「光里のこと、どれくらい好きだったの」

「っ、ええと……わかなんない」

「わかんない?」

「言葉じゃ表せないくらい、わかんなくて、好きだった……よ」



わたしの返事に、いったん言葉を切る。

そして、足を止めて、わたしに目線を合わせてきた。


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