ぜんぜん足りない。
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マンションの前にたどり着くと、見知った背中があってびくっとした。
「あ、桃音ちゃん。おかえり」
まさかの、律希パパ。
ええ、なんで⁉
「お、お久しぶりです。律希はもう寮に戻ったから、いないですよ?」
「ああ、わかってる。停学中は桃音ちゃんに迷惑かけたね。申し訳ないよ」
「い、いえ全然……っ」
「実は、その律希の停学のことで改めて学校側から話があるらしくてね。急遽仕事を休んで帰ってきたんだ」
「改めて……話……?」
律希パパはうなずく。
まさか、今度は退学とか言うんじゃ……。
一瞬青ざめたけど、そんなことはなかったらしく。
「実は、律希の停学は学校側の事実確認ミスだったみたいでね。不適切な処分だったってことで、謝罪させてほしいと申し出があった」
……うん?
てことは……
「やっぱり、律希は暴力なんてしてなかったんですね……‼」