ぜんぜん足りない。

「いや。暴力は暴力らしいが」

「え?」

「襲われかけてた女の子を助けるために……っていう理由だったらしくてねえ。あの子、腕っ節は強いから、相手に必要以上の怪我を負わせたことは否めないそうだけど」



そうだったんだ……。

そうだよ、律希が悪いことするわけない。
女の子を助けるためにやったって、一度もわたしに言わなかったところも、律希らしい。


やっぱりね、律希はかっこいいよ。



「ああ、そうだ。だから、停学中に迷惑をかけたお詫びに桃音ちゃんに持ってきたんだよ。よかったら食べてね」


そう言って、律希パパが渡してくれたのは、神戸プリンの豪華詰め合わせセット。


「ええっ、いいんですか!」

「たくさん食べてね。じゃあ、僕は今から学校に行ってくるよ」

「あっ、ありがとうございます……!」



ペコペコしてお礼を言う。
律希パパの背中が見えなくなったのを確認して、すぐにスマホを開いた。

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