ぜんぜん足りない。
「式が始まるまでエントランスで話そうぜ」
言われるがままホテルの入口付近に向かった。
受付からは死角になる位置に腰をおろす。
「みんな、光里がいきなりいなくなったから悲しんでるよ」
「へえ」
「中には失踪説とか、死亡説唱え始めるやつも出てきたんだけど、ウケるくね?」
「まじ? かなしい。勝手に殺さないでー」
「棒読みすんなや」
みっちーがククっと喉を鳴らす。
「けどさ、実際」
組み替えられた脚がおれのつま先に当たる。
それから、ちょっかいをかけるように、しつこく絡めてくる。
「 “郡光里” は、もうすぐ死ぬんだよねえ?」
「死ぬの? おれ」
「死なないの?」
「……死なない。でも、殺される」
みっちーの動きが止まった。
伏せられた瞼。
憂いた表情が似合わなさすぎて思わず笑ってしまう。