ぜんぜん足りない。
その直後。
ヴー、ヴーッとスマホの着信音が鳴り響く。
それはわたしのポケットの中から聞こえた。
「えっ」
画面に表示された名前を見て、思わず声をあげてしまう。
『中村 未知夜』
み、みっちー!?
勢いあまって通話ボタンをタップしてしまったから大変だ。
「は、はいっ。もしもし!」
すると、何がおかしいのか、電話の奥でくすくす笑う声が聞こえた。
『はは、桃音ちゃんは夜なのに元気だね~』
「あ、うん……そうだね」
ほんとは、気分は絶不調だよ。
語尾にビックリマークが付いちゃったのは、単にみっちーからの着信にびっくりしたからだよ。
「みっちー。一応聞くけど、かける相手間違えてない?」
そしたらまた笑われた。
『合ってるよー。桃音ちゃんと話したくてかけたんだし。 今、なあにしてんのかなって』
「えっ。今、は……」