ぜんぜん足りない。
「みっちーの中で、郡光里を生かしておいてくれたら、それでいーよ」
「うん。生かしとく」
「わーい。ありがとう」
「その前に。オレ、殺させないから、さあ」
こつ…と。
おれの肩に頭を預けてくる。
「目がいつも死んでて、だるそうで、意外と悪さ好きで、さらに意外と一途な……さあ。オレは、郡光里は、郡光里のままじゃないとだめなんだ〜」
姿勢を崩して、甘えたようにくっついてくるみっちーは、学校でのみっちーだったから。
おれもなんとなく、ネクタイを緩めて、脚をだらりと投げ出した。
「オレはね、光里。式の参加者じゃないわけ」
「うん?」
「中村社長の息子の、中村未來としてここに来たわけじゃないんだよ。今日は、郡光里の友だちとして、郡光里を死なせないためにやってきた、スーパーヒーローなのさ」