ぜんぜん足りない。
何言ってんの、と思う。
でも
「救ってくれんの?」
半分以上諦めかけて、それでも期待の混じった声がでた。
その質問には答えずに、みっちーは続ける。
「おれの知ってる郡光里は、この場面で、救ってくれんの?なんて言わないんだよなあ。周りのことぜんぶどうでもよくて、自分がどうなってもいいって思ってる人間……“ だった” 」
「……」
「間違ってないっしょ? でも、もう違う。光里は、桃音ちゃんを大事に想いすぎて変わっちゃったから」
「………」
「……普段賭け事に参加しないくせに、桃音ちゃんが他の男にターゲットにされたら血相変えて自ら相手役を買ってでるくらい、好きなんだもんね」
「……そうだね」
素直な返事が溢れる。
「桃音、泣いてた?」
「逆に泣かないと思う?」
「……」
「泣いてたよって言ったら、嬉しいだろ」
「そうでもないよ。泣かせすぎて、もうしんどくなってきた」
その直後だった。
死角に座ってたはずのおれたちの前に、誰かの立つ気配がした。
ドクリと心臓が鳴る。
──────そこには、見知った女性の顔があった。