ぜんぜん足りない。


今日までの消費期限、か……。

なんとなく、それが記されてるプリンの裏側を見て、あることに気づく。


……あ。



『おれの誕生日、』


ひとりごとのつもりだったのに、地獄耳なのか、桃音には聞き取れたらしく。

『えっ、誕生日なんですか⁉』と食い気味につっかかってきた。



うん、とテキトウに頷いて立ち上がったおれの手を、桃音は掴んで引き止めた。



『お、お誕生日おめでとう……!ええと、えっと……あっ、こおり君!』



──────


誕生日は
生まれてきたことを憎く思われる日。


産まなきゃよかった、早く消えてほしい。そんな思いを、1年で1番強くぶつけられる日

……だったんだ、今までずっと。



まっすぐな笑顔と、

初めて言われた“誕生日おめでとう”ってセリフ。


自分に向けられることは

一生ないと思ってた。


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