ぜんぜん足りない。
「光里、もうすぐ式典始まるよ」
「うん」
「あのさ、最後に聞きたいんだけど」
「うん」
「那月ちゃんは知ってたんだろ? 光里が転校するってこと」
「……」
「桃音ちゃんが未練を感じないように……光里がいなくなっても悲しまないように、って。あらかじめ那月ちゃんに説明して、付き合ってるフリをさせたんだろ」
「……なんで知ってんの?」
わかるよ、と言って
みっちーは八重歯を見せる。
「ねえ、このままでいーの?桃音ちゃんは、ほんとに光里のことが好きなのに」
「うん。リツキくんの代わりとしてね」
「それがさあ、違うって言ったらどーする?」
「はあ?」
「桃音ちゃんは、リツキくんのこと振ってるよ。こおり君のことが好きだからって……断ってる」
……なに、言ってんの?
だってみっちー。おれに、お前はリツキくんの代わりにされてるだけだって。……桃音の本命はリツキくんだから、あんまり手を出すなって、この前怒ったくせに。
「言うべきか迷ったんだけど。オレ桃音ちゃんとはすごい仲良しなんだよね。この前も一緒にカフェに行った……けど、そこでもお前のこと想って泣いてた」
心臓がいやな音を立てる。