ぜんぜん足りない。
ニコニコして顔をのぞきこんでくるし、その距離がいちいち近い。
この人イケメンなのに、あんまりうれしくないよ。
「じゃあ桃ちゃんの好きなタイプってどんなの?」
「好きなタイプ……?」
「そう。元カレとか……どんな感じだった?」
そう言われて、もわあああっとこおり君の姿が浮かんでくるから困る。
「ええと……いつも、やる気なさそうで、あと……みんなの前では冷たいんだけどね、ふたりきりになったら、時々甘くて……」
「あー…えっと。やる気なさそうって、つまりクールってこと?」
「クールとかじゃないの。たしかに、クールでかっこいい感じではあるけどね? ほんとにやる気なさそーなの。あと、イジワルでね……」
「あー……なるほどね。つまり、ドエスな男が好きなわけだ?」
「うーん……」
ザックリ言うとそうなのかもしれないけど、こおり君の魅力って、うまく言葉にできないよ。なんか、違うってなっちゃう。