ぜんぜん足りない。


そんなマサくんの叫びは丸無視して、こおり君はわたしの手を引いた。



「合コンのお金、これで足りますか?」



テーブルに置かれたのは諭吉さん3枚。

返事なんて聞かずにそそくさと出ていく。



わたしは意味がわかんなかったかけど、とりあえず目の前にこおり君がいるって事実さえあれば、他のことなんて、どうだっていいって思えた。



お店の外に、なんでかみっちーもいて、


「桃音〜元気だった?」


のんきな顔をしたお母さんもいた。



「はい、光里くん、これ車のキーね。私はみっちーくんとデートしてくるから、存分に使っていいからね」



高級車のカギをこおり君に渡して、お母さんはみっちーを連れてどこかへ歩いていってしまった。


どういうこと?

まったく状況が読めないよ。



でも……でも、ひとまず



「こ、こおり君……ほ、ホンモノ?」

「うん」


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