ぜんぜん足りない。
なんでここにいるのとか、今までどこにいたのとか聞きたいことは山ほどあるけど、今は……
「会いたかった……よ、 うぅ〜っ」
抱きしめて、その存在を確かめる。
こおり君も抱きしめてくれた。
「こおり君……こおり君……っ」
「桃音、泣いたら目立つ」
「で、でも、止まんな……」
「うん。だから、車入ろ」
パラレルワールドに来ちゃったのかと思った。
こおり君が車を運転する世界。
でも、こおり君が開けたのは後部座席のドア。
わたしを乗り込ませたあと、自分も隣に座って、ドアをしめる。
ふたりきり。
お母さんの車の後部座席は、スモークがかかってるから、外からは見えないの。