ぜんぜん足りない。


なんでここにいるのとか、今までどこにいたのとか聞きたいことは山ほどあるけど、今は……



「会いたかった……よ、 うぅ〜っ」



抱きしめて、その存在を確かめる。

こおり君も抱きしめてくれた。



「こおり君……こおり君……っ」

「桃音、泣いたら目立つ」


「で、でも、止まんな……」

「うん。だから、車入ろ」



パラレルワールドに来ちゃったのかと思った。

こおり君が車を運転する世界。



でも、こおり君が開けたのは後部座席のドア。

わたしを乗り込ませたあと、自分も隣に座って、ドアをしめる。



ふたりきり。

お母さんの車の後部座席は、スモークがかかってるから、外からは見えないの。


< 331 / 341 >

この作品をシェア

pagetop