ぜんぜん足りない。
結果、見事ほっぺが落ちてもおかしくない美味しさだった。
やわらかくて溶けてくような口溶け。
口に入れたらすぐになくなっちゃうのに、ミルクの濃厚な甘みはずっと残ってて……。
「はぅあ〜〜幸せ」
最後の一口。終わってしまうのが本当に惜しい。
「オンナノコって、こーいうちっちゃくて白くて映えるモノ好きだよねぇ。味なんて二の次って感じで」
みっちーは悪態をつきながらも、表情は非常に満足げ。
「都がお金持ちだったら、定期購入するのにな~」
ミヤちゃんも恍惚とした笑顔をうかべている。
そのくらい美味しかったんだ。
食べているあいだ、こおり君のことを忘れていられるくらいには美味しかった。
心のもやもやも晴れていた。
──入り口のところに、那月ちゃんの姿が見えるまでは。