ぜんぜん足りない。
ドキン!と心臓が跳ねあがると同時、反射的に目を逸らした。
しまった。鉢合わせするというパターンを考えてなかった。
那月ちゃんがいるってことは、こおり君もいるってこと。
パニックになっているうちに、うちの制服を着た男女グループがぞろぞろと店内に入ってきてしまう。
「お〜! みっちー奇遇〜〜!」
みっちーに気づいた男子がこちらに近づいてくる。
わたしは極力顔が見えないようにと俯いた。
「そういやみっちー。さっき1組の子が泣いてたよ、お前にドタキャンされたとかで」
「んあ〜マジ? ちゃんと謝ったのになあ、どうしても桃音ちゃんたちとプリン食べたいからごめんね、って」
「やばすぎ。先約を優先してやれよ。女の子のほうはみっちーのこと本気なんだからさあ」
「えーめんどくさい。求められても、オレは同じものは返せないのー」