ぜんぜん足りない。
「こおり君、今どこにいるの?」
『外』
「具体的にどこ?」
『教えない』
「わたしね、さっき那月ちゃんたちに遭遇したんだけど、こおり君いなかったよね、……なんで?」
ちょっとカマをかけてみる。
何も事情を知らないフリ。
『べつに。気分乗んなかったから』
「ほんとにそれだけ?」
『何が言いたいの』
だってこおり君、 “ 彼女が家で待ってるから ”って言ってドタキャンしたって聞いたよ。
口から出まかせなの?
都合のいい断り文句?
『てか、お前怒ってたんじゃないの』
「え?」
『昨日勝手に帰ったくせに、もういいんだ? みっちーに電話で機嫌とってもらった?』
こおり君がなにか言ってるけど、タイミングの悪いことに風の吹く音が響いてきて、うまく聞きとれない。
でも、“みっちー”って言ったのだけはわかった。
「みっちーとは、さっきまで一緒にいたけど……どうしたの?」