ぜんぜん足りない。
お許しがでたので失礼して抱きつけば、わたしの背中にそっと腕が回る。
腕が回っ……。
え? ……抱きしめ、返された?
状況を把握したとたん、血液が一瞬で滾った。
無意識に息を止めてしまった。
すぐに心臓のドキドキについていけなくなって酸素を求めたけど、どれだけ息を吸っても酸素濃度低い気がする。
「こおり君、」
「おれの部屋? おまえの部屋?」
「え……」
「今からどっち行くの」
う、あ、ええと。
自分の口からしどろもどろな声が漏れた。
心臓を、ゆるく掴まれたみたいな感覚。
「こおり君の部屋……いきたい」
こおり君の腕の中。
暑くて熱くて、そう返事をしただけで、くらっと目眩がした。