ぜんぜん足りない。
触れたのは一瞬だけなのに力が抜けて、今度はわたしがビニール袋を落としかける。
頭の中がハテナで埋め尽くされた。
……意味わかんない。
なんで、このタイミングでキスするの。
「意味わかんないよ」
声に出してみる。
「こおり君の態度と、やってることが正反対すぎて、意味わかんない」
冷めた目で見てくるくせに、なんでキスは優しいの?
「おまえも意味わかんない」
「え」
「顔赤いけど、それ怒ってんの、照れてんの」
「えっ、あ。……怒ってんの、だよ」
「なにその日本語」
笑ったのか呆れたのかイマイチわからないため息をこぼしたこおり君。
気づいたら、持ってたはずのビニール袋は再びこおり君の手に戻ってた。
「テキトーにそのへん座っといて」
そう言い残して、キッチンの方に消えていってしまった。