ぜんぜん足りない。

待つこと1分。
目の前に、お皿がふたつ、縦並びに置かれている。

リビングの台、向かい側にこおり君が座った。



「こおり君のとなり行ってもいい?」

「なんで」

「くっつきたい」

「そう」


これ、いつもの会話。

でも、さっきと、さっきのちょっと前のキスのせいで、いつもより心拍数高めで挑んでる。


底のプラスチックをプチッと折って、お皿に落た。

ぷるんぷるん、形も崩れずいい感じ。



「こおり君のも、プチッてしていい?」

「だめ」

「なんで!」

「自分でやる」

「わたしがやりたい」

「おれもやりたい」

「思ってないでしょ!」


案の定、無抵抗。

そのくせ、わたしがぷっちんしたあとに


「あーあ。やりたかったのに」


なんて、棒読みで責めてくる。

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