ぜんぜん足りない。
無視して、自分のプリンを口に運んだ。
さっきお店で食べたのより、断然甘い。
甘すぎなんじゃないかってくらい甘い。
でも、これが好きなの。
「美味しいね」
「胸焼けした」
「こおり君、まだ食べてないじゃん」
お皿に乗ったプリンは、綺麗で可愛い形を保ったまま。
「桃音、おれのいる?」
「えっ。食べていいのっ?」
思わず食いついてしまったけど。
やっぱ、ナシナシ。
「う……。一緒に食べたい。から、こおり君は自分の食べてよ」
「そんなに食べたそうにしてんのに?」
「え、ぅ。 してないよっ」
「そー? おれは別に、こっちでいーけど」
……って、
──────あ。
綺麗な目がわたしをのぞき込んだかと思えば、そのまま、挑発的に細められて。
「……っ、ん」
くらっときちゃう。
さっきの熱、まだ収まってないのに。
最初は丁寧に置かれたはずの唇が、だんだんと意地悪になる。
わたしが酸素を求めるのを拒むみたいに、タイミングを絶妙にずらしながら角度を変えて、押し当てて。
ときどき、ちゅっ、とわざとらしく音を立てたりして。