ぜんぜん足りない。

あつ、すぎる。

頭の中から、ヤカンが湧いたときのピーって音が聞こえてる気がした。



「……ぅ、」


唇を甘噛みされて、胸がきゅっと狭くなる。


息するタイミングを少しだけ与えてくれたかと思えば、今度はやさしく、それでいて強引に唇をこじ開けるようとしてくる。



「……、っ、はぁ」


なけなしの思考力で拒もうとするんだけど、好きな人の甘い誘惑には勝てっこなくて。


「ん。甘……」


耳元で囁かれたら、もう大変。

頭はぐらぐらするし、心臓は破裂しそうだし。



「こおりくん……っ、」

「うん?」

「あついよ……」

「ん。そーだね」


「ぅ……、くちびる、とけそう」

「じゃあ、もうやめる?」



唇を離されたとたん、泣きそうになるから、たぶんもうだめ。



「まだ……」

ぎゅっと抱きついたら、ひと呼吸おいて、背中に腕を回してくれた。


< 59 / 341 >

この作品をシェア

pagetop