ぜんぜん足りない。

……そして、自滅しちゃう。


こおり君と那月ちゃんがイチャイチャしてるの想像しただけで、目頭がじわっと熱くなって、ぽろっと涙が溢れた。



「……は? いきなり……なに」

「う、っぅ〜」

「……情緒不安定すぎでしょ」

「ごっ、ごめんなさ……ぃ」



あーあ。情緒不安定な女は彼氏に嫌われるって、誰かが言ってたな。

好きなだけなのに、なんでこんなに感情が大変なんだろ。

わたしが那月ちゃんより可愛かったら、こんな苦しくなったりしないのかな?



「嘘だよ、他の子とはやんないで……。お願い」


ずずっと鼻をすすりながら精一杯見あげる。

わたしを見おろす呆れた目。でも、どことなくちょっと優しいかも。気のせい?


「桃音……今触ったら怒る?」


なんて、聞いておきながら、こおり君は返事を待たなかった。


< 65 / 341 >

この作品をシェア

pagetop