ぜんぜん足りない。
周りには2人の女子がいるけど、いちいちめげてなんかいられない。
「こおり君、おはよう!」
さりげない風をよそおって声を掛ける。
そしたらこおり君、視線を一瞬だけこっちに寄こしてきて。
「国立さん、おはよー」
やる気のない声を発して、目の前を通り過ぎる。
……え。
……“通り過ぎる”?
「こ、こおり君……!?」
一応返事はしてくれたけど、こんなの、シカトも当然。
わたしの計画では、このまま二人きりになって、朝礼が始まるまで空き教室で楽しくおしゃべりする……流れだったのに。
「ヒカリって、子供っぽい子のことまじで眼中にないよねぇ」
女の子の片割れがそう言いながら、こおり君の腕をとった。
こおり君はその腕をやんわりほどきながらも、体を離すことはしない。
……この光景。
正直、見慣れてる。
見慣れてるのに、今までで1番のダメージかもしれない。
学校でも、話してくれるんじゃなかったの?