ぜんぜん足りない。
「こおり君、あの、待っ……」
返事はナシ。華麗にスルー。
唖然とするしかない。
ひとり立ち尽くすわたしに、しばらくしてミヤちゃんから声がかかった。
「んもう、まだやってるのー?」
「……」
「ねえ桃ちん? 聞こえてる?」
「……あ、ミヤちゃ、おはよう」
やっと返事をすると、怪訝そうに目を細められる。
「懲りないよねぇ、桃ちん。郡光里の顔がかっこいいのはわかるけど」
「顔以外にもいいとこたくさんあるよ?」
「美化しすぎだって、あんなに愛想ないのに! 目覚ましなよお」
しょうがないよ。寝ても覚めても好きなんだもん。
「光里くん追っかけるのもうやめなって〜」
「ええ、なんで」
「あいつ桃ちんのことぜんぜん相手にしてないじゃん。何様なの?」
「あう……。でも、追っかけてるだけで十分幸せだから……」