ぜんぜん足りない。
こんやは眠れない。
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【 わたしの家、泊まってもいいけど、今日だけだからね。】
律希には、絵文字を1つもつけないで返事を送った。すると、すかさず既読がつく。
【 8時頃に着く 】
【 わかった。律希、鍵は持ってるんだよね? 】
【 持ってる 】
【 よかった。わたしは友だちの家に泊まるから、勝手にあがってどうぞ 】
【は?】
は? は、こっちのセリフなんですけど。
既読をつけて、もう返信はしなかった。
そしたら、どうしたことか。
【 友だちん家に泊まるってなに 】
【 おい桃音 】
【 逃げてんの? 】
【 てか、やっぱまだ怒ってんの? 】
メッセージの連投。
【 俺が黙って家出たこと 】
最後まで無視するつもりだったのに、できなかった。
まだ引きずってるって、意地でも思われたくなかったから。
【 怒ってないし、律希のことなんてどうでもいい よ。 わたし、もう好きな人いるし 】
すばやく打って、トーク画面を閉じる。
すぐに返信がきたのが音でわかったけど、スマホをカバンに入れて、もう見えないようにした。