ぜんぜん足りない。
律希が来るのが8時。
なんとしても、それよりも前にこおり君の部屋にお邪魔しておく必要がある。
予定より早く着く場合も考えて、最低でも7時には。
帰るなり旅行用バッグを引っ張りだした。
パジャマ、下着、化粧水、歯ブラシセット、あした着る制服、アイロン、課題……。
他に、なにかいるものあるかな?
バッグのチャックを閉める手を止めて、もう一度よく考えてみる。
なんか、忘れてるような……。
ところで今何時だろう。
スマホで時間を確認しようとして、……思い出した。忘れてたのはスマホだ。
律希からの返信を見たくなくてスクバに仕舞っておいたんだった。
仕舞っておいたのはいいものの、遅かれ早かれ見なくちゃいけないから気が重い。
大きく息を吐いて、画面をつける。
──その直後、心臓がイヤってほど大きな音を立てた。
【 俺はまだお前のこと好きなんだけど 】