ぜんぜん足りない。


自分の思考回路がとっても単純につくられてる自覚はあった。


悲しいことよりも、嬉しいことのほうが勝つの。
落ちこむのも早いけど、こおり君とふたりで居れば、あっという間にハッピーになるの。


こおり君とならコンビニに行けるのだって嬉しいのに、ファミレスで向かい合ってメニュー選んでるなんて幸せすぎる。

本当に、そう思うんだよ。



「こおり君と一緒なら高級レストランなんて一生行けなくてもいいかも」


心の声が漏れていたらしい。
伏せられてた目がわたしを捉える。



「ヘンなこと言ってないで早く選んで」

「あ、ごめん。こおり君はどれにするの?」

「チキン南蛮かな」

「じゃあ、わたしもそれがいい」


呆れた顔をされた。


「自分の意志とかないわけ」
「あるよ」

「どこに」
「こおり君と同じもの食べたい。……って意志」


するとこおり君はふいっと目を逸らして、呼び出しボタンをピンポンした。


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