年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 朗らかにゴードン伯爵夫人が笑う。
 ……そんなふうになれたらいい。セラヴィンさんが心の重荷を分け合うに足る、そんな存在に私はなりたい。
「それでは、また明日参りますわね」
「はい」
 私はいつも通り、ゴードン伯爵夫人の見送りに席を立った。
「あら?」
 すると、ゴードン伯爵夫人が私のスカートに目をとめて、小首を傾げた。
「少し失礼しますね」
 ゴードン伯爵夫人はそう言って、私の背面に回り込んだ。
「どうかしましたか?」
「ほんの小さくですけれど、ドレスに染みが付いてしまっているみたい」
 怪訝に思って振り返れば、ゴードン伯爵夫人が声を低くして囁いた。
「っ、やだっ!」
 慌ててお尻の辺りに目線をやり、朱色の汚れを見つければ、頬にカッと朱がのぼる。
「同じ女同士ですから、そう慌てなくとも大丈夫ですよ。それに小さな染みですから、どこも汚してはおりませんし、誰も気付いてはおりませんわ」
 動揺する私とは対照的に、ゴードン伯爵夫人に慌てた様子はない。
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