年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 いつもと変わらない夫人の穏やかな様子に、救われる思いがした。
「私もね、障りの際には、幾度肌着やドレスを汚したかしれませんのよ」
 夫人のおかげで、不要な焦りはなくなった。けれど現実問題、汚れたドレスをそのままにはしておけないし、差し迫って処置は必要だった。
「すみませんが、奥で着替えてきます。お見送り出来なくて申し訳ないのですが、今日はこれで失礼します」
「えぇ。私の事は構わないでちょうだい」
 私はゴードン伯爵夫人の前を足早に通り過ぎ、クローゼットに向かうと、手持ちの荷物の中から、脱脂綿を引っ張り出した。
 ……よかった、マクレガン侯爵家に向かうために纏めた荷物の中に、念のために少しだけ入れておいて。
 私がニルベルグ王国に来て、一週間。その間、セラヴィンさんは不足がないように甲斐甲斐しく身の回りの物に気を遣ってくれたけれど、流石に女性特有の事情の品物までは気が回らなかったようだ。
 私自身も、慌ただしい日常に忙殺されて、すっかり油断してしまっていた。
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