年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 本音を言えば、すぐにでも手当てに向かいたい。だけど「待って」と言われた手前、このまま手洗いに消えるのも憚られ、私は静かにゴードン伯爵夫人を待った。

「お待たせいたしました」
 言葉通り、ゴードン伯爵夫人はものの数分ですぐに部屋に戻ってきた。その手には、白いポーチが握られていた。
「手当てにこれをお使いになって。専用の物が入っているから」
 ゴードン伯爵夫人は息を弾ませながら、私に向かってポーチを差し出す。
 え!? もちろん、状況から夫人が私のために、専用の手当て一式を取りに走ってくれた事は分かった。
 だけど突然の事に戸惑ってしまい、私は咄嗟に反応が出来なかった。
「あぁ、遠慮はなしよ。恥ずかしい話だけれど、私はもう、これらが不要になってしまったのよ。処分しようしようと思いながら、ずっと置いたままになっていたものだから」
 固まったままの手にポーチがグッと押し付けられて、私はゴードン伯爵夫人の勢いに圧されるように受け取った。
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