年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 セラヴィンさんは尚も縋りつくエリオット子爵を虫けらでも見るような目で睨みつけ、地を這う声音で告げる。
「連れていけ」
 ルーカスさんに向かい、セラヴィンさんがエリオット子爵を乱暴に押しやった。
 ルーカスさんはセラヴィンさんとひとつ目配せを交わすと、問答無用でエリオット子爵を引っ立てて、馬車へと消えた。
「リリア!!」
 子爵を放ったセラヴィンさんは私に駆け寄ると、懐から手巾を取り出して傷口に当てる。
「……あぁ、よかった! 出血はあるが、あまり深くはなさそうだ!」
「あの、どうしてセラヴィンさんがここに……?」
「議会で領収税からの臨時徴収が、途中退席したエリオット子爵以外の全会一致で決議した。真っ先にリリアに伝えたくて迎えに来たのだ。それがまさか、こんな事態になっていようとは……!」
 傷口に宛がわれたセラヴィンさんの手は、小刻みに震えていた。背中に回されたもう片方の手も、同様に小さく震えていた。
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