年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 おそらくこの銀細工は物入れになっていて、ここから開くようになっているのだ。
「あぁ、とても大切なものを入れている。これは俺にとって、何よりも強力なお守りだ。これのおかげで、今の俺がある。だからこれを、今度はお前がお守りとして持っていてくれ」
 取っ掛かりに爪先を掛け、今まさに開けようとしていた私は、セラヴィンさんの言葉で銀細工からそっと手を離した。
「……開けんのか?」
 セラヴィンさんは、少しだけ驚いたように私を見た。セラヴィンさんの先の言葉は、けっして中を見るのを止める意図で語られたものではない。
 だけど私に、開ける意思が無くなった。
 お守りの中身を知ろうとするのが無粋に感じたのもあるが、それ以上に、中身を知る事が私にとってさほど重要ではなくなったからだ。
「見なくとも十分に伝わります。これにはセラヴィンさんの思いがいっぱいに詰まっている。……なによりの、お守りです」
 私は大切なお守りをキュッと胸元で抱き締めた。セラヴィンさんは眩しそうに目を細め、私を見つめていた。
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