年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
「……お前は本当に、どこまでも清らかで、そして温かいな」
 セラヴィンさんはそう言うと、私の手からそっとペンダントを取り上げて首に掛ける。
「名残惜しいが行ってくる。夕食はまた一緒に取ろう」
「っ」
 セラヴィンさんは唇に触れるだけのキスを残し、足早に扉に向かう。
「カエラ、後を頼んだ」
「かしこまりました」
 セラヴィンさんは控えていたカエラ女官長に言い残すと、今度こそ部屋を後にした。
 パタンと扉が閉まり、セラヴィンさんの足音と気配が遠ざかる。すると直後、私の体がカタカタと震え出す。
 ……私を殺したいと考える、誰かがいる。
 セラヴィンさんの腕の中で、一度は遠ざけた思考だった。彼といる時は抑えられていた不安や恐怖。彼がいなくなり、抑えていたそれらの感情がじわじわと溢れ出すのを感じていた。
『どうしてあの人がお前を助けて死ななければならかったの? 私の大切なあの人を返してよ、この人殺し』
 突如、脳内に響き渡ったお母様の怨嗟の声に、ズンッと胸を撃ち抜かれたような衝撃が走る。
 ……いいや。もしかすると私は命を狙われる以前に、そもそも今、こうして生きている事自体がおかしいのだろうか?
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