年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 護身術にも明るいゴードン伯爵夫人は、まるで私を守ろうとでもいうように、多くの時間を私の側で過ごしてくれていた。授業以外でも親しく交流させてもらい、気の置けない関係のゴードン伯爵夫人が侍女に代わって同室に控えてくれる事は、私にとってもとてもありがたい事だった。
「よかったら人気の物語本など持ってきましょうか?」
「……いえ、せっかくですが物語はまたの機会にします」
 僅かな逡巡の後、私はゴードン伯爵夫人の申し出に首を横に振った。
「それじゃあ、私は奥で刺繍を刺しているわね。もし何か入用の物などあれば、遠慮なく言ってちょうだいね」
「はい、ありがとうございます」
 ゴードン伯爵夫人が刺繍道具一式の入ったバスケットを手に奥のソファに向かうと、私は文机に足を向けた。文机の椅子に腰掛けると、引き出しから便箋を取り出して、ペンを取る。
 手紙の相手はスコット子爵夫人だ。
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