年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 私が背中を預けていた壁の高い位置に明り取りのガラスが嵌まっているのは知っていたのだが、園芸道具も含めて小屋内のほとんどが炎に巻かれてしまった今となっては、それを破る手段がなかった。
 ここまでなのか……。諦めかけたその時、私の胸に一筋の明光が差した。
 ……あるじゃない。
 棒はないけれど、銀細工ならここにある! 遠心力をつけて放り投げれば、硬い銀細工は重さと威力を増し、ガラス窓を打ち破ってくれるはず……!
 セラヴィンさんから貰った大切なお守りを放る事に躊躇はなかった。これは、彼が私の守りになるようにと願って渡してくれたお守りだ。
 彼は、私がこのお守りを懐に抱いたまま焼け死ぬ事など望まない――!
 私は首からペンダントを外すと、最後の力を振り絞ってガラス窓に向かって放った。
 ――ガッシャーンッッ!!
 頭上でガラスの割れる音が響く。目論み通り、銀細工はガラスを破り、小屋の外へ飛び出した。
 黒々とした煙が、破れた窓から外に流れていく。手巾越しにも、ほんの少し呼吸がしやすくなったのを感じた。
 ……よかった。これで少し、希望が繋がった。
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