年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 けれど空気の逃げ口が作れた一方で、私の消耗も激しかった。私はズルズルと壁伝いに、床へと倒れ込んだ。
 朦朧とする意識の中で、私は今の自分の状況がよく分からなくなっていた。
 ……ここはどこ? 私は一体、どうしたんだっけ?
『もういいかーい』
 ふと、脳裏に懐かしいお父さんの声が響いた。
 ……あぁ、そうか。私はお父さんのガラス工房を訪ねて、一緒にかくれんぼをしてたんだ。
 お父さん、早く私を見つけてよ? 私はここにいるよ。
 すると願いが通じたのか、私の前にスッと手が差し伸ばされる。
 私は嬉々としてその手を掴む。
 ……え? だけど掴んだ手は、大きくて温かな父のそれとは違い、氷のように冷たかった。
 咄嗟に引こうとしたけれど、手が離される事はない。
『お前は、あの時に死ぬべきだったの』
 驚いて見上げる私に、死神が囁く。
『今度こそ、お前の番よ』
 死神が私に向かい艶然と微笑む。私は縫い止められたみたいに死神を見つめていた。
 ……死神は、お母様の姿をしていた。
 ――ドォォオオーンッ!
 大きな爆発音を聞いたのが最後。私の意識は完全に沈んだ――。




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