年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
「其方は、料理人だな?」
「自分は料理長補佐のアーベルといいます」
「ではアーベル、給仕係のルドルフについて聞かせてくれ」
「はい……。俺とルドルフは職種こそ違いましたが、同年に王宮に召し上げられました。それから共に切磋琢磨して勤め、顔を合わせれば軽口を言い合って、そうやって二十年、真面目にやって来たんです。……だけど俺、見ちまったんです」
 アーベルは、ポツリポツリと語り出す。
「事件当日、奴が思い詰めたような表情で給仕服のポケットに何かをねじ入れてるの。チラッと見えた感じだと、薬包紙みたいなふうで」
 ……そうか。毒は澱粉紙で包んでいたか。
 事件直後に全使用人に対して実施したボディチェックで証拠品はあがっていなかった。だが、澱粉紙ならば瓶などの容器と違い、水などの液体に溶かしてしまえば証拠が残らない。
「後から考えたら……あぁ、そうなのかなって。……全部、女が悪い。だけどルドルフも馬鹿だ。妙な女に引っ掛かって、変わっちまいやがって……っ、この馬鹿野郎が!」
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