年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 ガタガタと体は震え、歯と歯がぶつかってカチカチと音を立てた。
 お義父様はタオルを浴室の床に放ると、再び私に手を伸ばす。
 その手がついに、私の肌に触れる――。

 ――ガタンッ!!

「あなた、帰っていらしたなら、一言おっしゃってくださいな。それからリリアは赤ん坊ではありませんから、入浴くらい一人でできましてよ? ですからさぁ、こちらで一緒に食前酒からいただきましょう」
 扉が乱暴に開かれたと思った。直後、お母様のおっとりとした声が浴室内に反響する。優し気なお母様の声には、しかし隠し切れない険が滲む。
 だけど今、私にとってお母様の声は、天からの救いの声にも等しかった。意思とは無関係に、目頭がジンと熱を持った。
「いやなに、儂が脱衣所の前を通りかかったら扉が開きっぱなしになっておったのだ。清掃中に戸も締めぬ使用人の無作法を諫めようとしたら、まさかリリアが入浴中だった。あげくリリアが浴室から儂に向かって、背中を流して欲しいと甘えてみせるものだからついな」
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