年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 すぐにでもリリアを捜しに駆け出したい思いを抑え、俺は近衛兵の言葉を遮って問う。こういった通常ではあり得ない状況の裏には、作為的にそれに追い込んだ何者かの意思があるからだ。
「侍女が、リリア様は庭で陛下と落ち合う約束をしていると。階下ですぐに陛下付きの護衛と合流するから私どもの同行は不要と、そう申しましたので」
「その侍女の名は?」
「イライザ・バークレーです」
 ……リリアどうか無事でいてくれ!
 耳にした瞬間、俺は走り出していた。


***


 ……あぁ、まただ。
 死神が去っても、夢は幾度となく繰り返される。
 私はまた、夢の中で七歳の子供になって、燃え盛るガラス工房で身を縮めていた。
 かつての記憶というのは、容赦がない。まるで、忘れる事など許さないとでもいうように、私は夢で何度だって同じ結末を辿るのだ……。

 炎があらゆる物を巻き込んで、ガラス工房を赤く焼いていく。燃え上がる炎はついに、天井にも燃え広がって這うように進む。
 ――ギシッッ!
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