年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 私を深く抱き直すと、その人は体勢を低くして、濡れた布越しにも肌を焼くような熱さの中を駆け出した。私は少しでもその人の負担にならないように、意識してピッタリと身を寄せた。
 やっと熱さを脱したと思ったその時、周囲から耳をつんざくような歓声を聞いた。
「セラヴィン様! ご無事でございましたか!!」
「なんと! リリア様もご無事で!!」
 歓声の中には、いくつか知っている声もあった。
「お二人が戻られたぞ!!」
「すぐに御殿医をこれへ!」
 いまだ私の視界は塞がれたままで、その光景を見る事は叶わない。
 夢の中の出来事のはずなのに、不思議な事に直接脳裏に映像が浮かんでくる事もなかった。だけど耳だけは正しく機能しているようで、方々から上がる歓声は詳細に聞こえていた。
 ここで視界を遮っていた布が、ずっと口元を覆っていた手巾ごと取り払われた。
「リリア! 無事でよかった……!」
 愛しいその人が私にグッと顔を寄せ、満面の笑みを浮かべる。
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