年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 リリアの元に辿り着くまで、足元から燃え上がる炎が抑えられるように、手近な木製板も掻き集めて濡らし、農作業用の鍬を掴んだ。
 壁に寄り、身を縮めているであろうリリアを万が一にも傷つけぬよう、打ち破る場所を慎重に選ぶ。
 扉を破る直前に、ルドルフ確保を告げる警笛が鳴り響くのを聞いた。そうして俺は、渾身の力で鍬を振りかぶった。
 壁を破ると、熱された小屋内に一気に外気が流れ込み、付近で爆発が起こった。俺は体を丸めて爆風を凌ぐと、すぐに濡らした木材を放り入れて敷きつめ、迷わずに一番炎上の少ない西側の壁に向かってその上を駆けた。
 リリアのふわふわとした柔らかな巻き毛は、煙の充満する中でもすぐに分かった。
「リリア――!!」
 そうして抱き締めたリリアは、俺の腕に確かな温もりと生きた鼓動を伝えてくれた。



 リリアは「セーラ」と小さく囁くと、柔らかな笑みを結んだまま気を失った。
「リリア様をこちらへ」
 俺は腕の中で意識をなくしたリリアを、御殿医らが差し出す救護用の敷布に横たえた。
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