年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 場違いなほど穏やかな笑みを浮かべ、マルグリットは眦からホロホロと涙を零した。
 その姿はあまりにも歪だった。
 込み上げる怒りの渦を理性を寄せ集めて抑え込む。それを真正面からぶつけたところで、マルグリットには響かないと分かったからだ。
 俺はマルグリットに背中を向けると、そのまま地下牢を後にした。
 マルグリットはこれ以降、取調官の聴取にも口を閉ざし、一切語る事はなかった。それは一週間後の処刑の瞬間まで、一貫していた――。


***


 ここは婚姻式の会場となる大広間の隣に設えられた控えの間だ。
 私はここで、入場の時を待っていた。
「……いかん、なにやら緊張してきたな」
「あなたが緊張してどうするんですか!? 今日の主役はリリア様と陛下ですよ! しっかりしてくださいな!」
「うーむ。まさか儂が花嫁の父になる日が来ようとは思ってもみなかったからなぁ」
「あら、私は可愛い娘を持つ希望を捨ててはいませんでしたよ! おかげでほら、こんなに可愛いリリア様を娘に迎えられたんですから!」
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