年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 ゴードン伯爵夫妻の軽妙な掛け合いに笑みが浮かぶ。私のお妃教育ではマナーの講師も請け負った貴婦人の中の貴婦人、そんな夫人はしかし、気の置ける夫の前では随分と自然体だ。
 ……私は今日、セラヴィンさんに嫁ぐ。
 同時に、私はこの国の王妃になる――。
 視界にやわらかな影を落とすベールをそっと撫でれば、触れた部分からスコット子爵夫人とゴードン伯爵夫人の温もりを感じた。
 スコット子爵夫人の手で作られたこのレースのベールは、義母であるゴードン伯爵夫人の手で掛けてもらった。
 二人は本当の血縁ではないけれど、私の心の中で、二人は確かにお祖母ちゃんであり、お母さんだ。
「……おふくろ、おやじ、会話が表まで筒抜けだ」
 正装に身を包んだルーカスさんが、控えの間を覗き込んで声を潜めた。
「あらま!」
「す、すまん」
 ルーカスさんはヤレヤレと肩を竦めると、二人からそっと私に視線を向けた。
 私とルーカスさんの目線が絡むと、その目は優し気にスッと細められた。
< 279 / 291 >

この作品をシェア

pagetop