年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 そうして大広間の中央まで歩行路を進んだところで、私はゴードン伯爵の腕に添えていた手をそっと解いた。
「リリア」
 代わりに差し出されたセラヴィンさんの手を取れば、グッと深く抱き寄せられた。その温もりと力強さに、脈が大きく跳ねた。
 盛大な拍手が降り注ぐ中を、私とセラヴィンさんは司祭様の待つ祭壇に向けてゆっくりと歩き出す。
「俺の妻は女神より美しい」
 熱い吐息と共に耳元で囁かれ、頬にカッと朱がのぼる。
 だけど明らかに、私には過ぎた賛辞だ……。
「それは、ずいぶんと贔屓目で見ていますよ」
「そんな事はない。リリアを妻にできて、俺は世界一の幸せ者だ」
 参列客らの目に不自然に映らぬよう、私が繋いだ腕を軽く引いて訴えれば、セラヴィンさんは蕩けるような笑みで、さらに私を蕩かすような台詞を続けた。
 甘い台詞は否応なしに私の体温を上げる。だけど私の胸には、ほんの少し負けん気も浮かぶ。
「それはどうでしょう? だって、世界一の幸せ者は私だと自負していますからね」
 セラヴィンさんは驚いたように目を瞠り、すぐに弾けるように笑った。
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