年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 願わくば、この布の向こうの人物が、少しでも穏便な形でお母様に伝えてくれる人だといい……。私は祈るような思いで、ついに握っていた布を引き開けた。

 ――パサッ。

「ヒッ!!」
 ところが、布の向こう側に広がっていたのは、私の想像を遥かに越えた光景だった。
 奥の壁に背を凭れかけるようにして、こちらに鋭い目を向けているのは想像した通り、人だった。
 しかしその人の外套は、おびただしい量の血で赤く汚れていた。
「あ、あなた大丈夫!?」
 その出血量に圧倒されたが、一瞬の後、私は男性に駆け寄って震える手を差し伸ばした。
 しかし触れる直前で、私の手は男性自身によって弾かれた。
「……構うな。これは、俺の血ではない。返り血だ」
 男性が荒い呼吸の合間に、切れ切れに告げる。
「っ、でも……!」
「俺に構うなと言っている」
 男性は更に吐き捨てるように言ったけれど、その言葉は私には到底納得出来るものではなかった。
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