年の差婚で娶られたら、国王陛下の愛が止まりません
 先の見えない暮らしの中で、この場所が三年間、私につかの間の憩いを提供してくれた。
 しかし小屋は、既にその役目を終えた。セラヴィンさんを助け、私たちを引き合わせるという大役を終え、幕を閉じるのだ。
「本当にいいんだな?」
「はい」
 小屋を燃やす事に、躊躇は一切なかった。
 セラヴィンさんがお義父様を運び出し、私はその間に最低限持ち出したい物だけを選りすぐる。一年の期間と思えば、無理に多くの物品を持ち出そうとはしなかった。
「それだけか?」
 麻袋ひとつ握り締めて小屋から出てきた私に、セラヴィンさんが訝し気に問いかける。
「はい。だって、ゴールが見えていますから」
 安息の場所だったここはなくなる。しかし、小屋を失った私に安息がないのかといえば、そうではない。
 セラヴィンさんが、私の希望――。
 これまで私は、目の前の一日一日を無事に過ごしきる事が全てで、未来への展望など描いた事も無かった。けれど希望が胸に光を灯し、柔らかに照らす。
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