溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
「今度の夏祭りで友達が屋台だすのよ。それで、チケットをもらったの」


差し出されたのは、焼きトウモロコシとラムネのチケット。


「あー。これ、そこの河川敷のお祭り?」


朔くんが言った言葉に、胸がどくんっと跳ねた。


だってそれこそが、私が待ち焦がれたあのお祭りだから。


すると、希美さんがパチンと手をたたく。


「ちょうど2枚づつあるし、ふたりで行ってきたらいいじゃない」


「ええっ!?」


「はあっ!?」


私と朔くんの声が重なる。


ふたりで……って。


「ってことで、アタシ帰るから。小春ちゃん、ごちそう様ー!」


残されたのは、私と朔くん、そしてチケットが2枚ずつ。


しーん……。


嵐が去った後のように、家の中が静かになった。


希美さん、もう少しいてくれたらよかったのに。


昨日のこともあって、朔くんのことをなんとなく意識しちゃう。
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