溺愛したがるモテ男子と、秘密のワケあり同居。
「サンキュ。いや、俺の方こそ、急に開けて悪かったな」


お互いに少し気まずさを持ちながら、向かい合ってホットココアを飲む。


フワッといい香りが鼻腔をくすぐる。やさしい甘さが体中に広がる。


「しばらく止まなそうだな」


朔くんの目線をたどると、窓から見える庭の木が、風に激しくあおられていた。


ゴーゴと不気味な音も鳴っていて、まるで台風みたい。


「うん。明け方くらいまで続くみたい」


「マジかよ」


朔くんはゲーって顔をする。


そう言えば、今日朔くんは遅刻したことを思い出した。


「今朝はごめんね、起こさなくて……」


起こすなって言われたからほんとに起こさなかったんだけど、まさか遅刻するなんてびっくりしちゃった。


「いいよ、俺が起こすなって言ったんだし」


「でも……。朔くん、全然来ないから気が気じゃなかったよ」


「俺も焦ったわ。起きたら9時だし」


そう言って、フッと軽く笑う朔くん。
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